子供のころ
人間には
子供という種類と
大人という種類がいて
別の生き物なんだと思つていた
母の鏡台の口紅をこつそり塗り
三面鏡で横顔を増やし
台にのぼつて視界を高くすると
不思議な
別世界の
大人という生き物になれた気がした
ある日
自分も大人になれることを知る
背が伸びてゆき
胸も膨らんでゆき
お化粧ができるようになつた
伸ばした髪をカールだつてできる
自由を手に入れた
籠の外には責任や重圧がつきまとう
たまらなくさみしくて
誰かにしがみつきたくなる時もある
でも
私 ・ は ・ 自 ・ 由
誰も私をがんじがらめにはしない